これだけは是非チェック!!ベトナム進出前・進出後に必要な当地医療事情

【お知らせ】

【一般向け:ベトナム渡航医学関連情報】

専門家(人事担当者・産業医・社長様)向け:ベトナム渡航医学関連情報】

Xin chào シンチャオ!! YOKOYAMA KAIKEI(横山会計) 代表の横山(ヨコヤマ)です。

 

あなたは、ある日大事なプロジェクトを任され、ベトナムへの海外駐在を命じられます。

また、一念発起して、ベトナムで新たなビジネスをスタートさせるため、起業準備に取り掛かっています。

 

どちらも心オドル未来に思いを馳せ、これから起こる悲劇、、そう

 

「予防接種も受けずに狂犬病の犬に噛まれ、生命の危機にさらされる。。」

「保険にも加入せず、心筋梗塞で設備の整った日本の病院に緊急搬送。1,000万円の出費で起業を断念。。」

 

など不測の事態に思いも至らず。。

 

やはりベトナムビジネスのスタートは、健康が担保されていないと始まらないでしょう!!

 

ベトナム進出を検討されている企業の担当者、事業主そして、医療従事者の皆さま

ベトナム駐在・出張の決まった駐在員、出張者の皆さま

既にベトナム進出をされた在留邦人の皆さま

 

少しでも当地ベトナムでのビジネスを円滑に進めるためにも、この度Clover Plus 所属アドバイザー 中島敏彦医師(医師としてはRafflesmedicalホーチミンクリニック勤務 日本国医師免許・Viet Nam Medical License保有)から、寄稿いただいたこちらの情報を、是非チェックしてみてください。

中島医師からの、これまでの海外での医療従事経験を通して得られた、海外、特にベトナムに関する医学的情報を現在・未来に活躍する日本人の方たちと共有するとともに、ベトナム法人社会のさらなる発展の一助とするため、広く情報を発信されたいとの強い思いが、弊社の掲げる「素晴らしき日本の良さを世界に」の思いと繋がる点が多く、このたびのご寄稿をお受けすることとなりました。

 

目次

【1】海外で暮らすリスク

1)外務省による海外邦人援護統計

• 2016年における死亡者数504人(世界での)死因の1位は傷病(384人)

• 一般的に傷病は心筋梗塞等の虚血性疾患と脳卒中等の脳血管疾患が多いとされている。 青年期よりも壮年期、高齢期の多い。

• 2007年から2016年の10年間の死亡原因は傷病が全体の8割近く
• また自殺による死亡も1割近い(2位)年齢別では20代~30代、女性が多い。(在NY総領事館のホームページより )

引用・参考文献

2016 年(平成 28 年)海外邦人援護統計
・ JAPAN BUSINESS PRESS 2015.6.13

2)生活習慣病

・海外で暮らすことにより増加する生活習慣病悪化のリスク

• 車での移動が多くなることにより運動の機会の減少
日本からの出張者の対応(夜や週末の付き合い)の常態化による食生活の悪化。
喫煙習慣の悪化(途上国ではタバコが安いことが多い)。
• 単身赴任者は特に生活が乱れやすい。
• 高血圧や糖尿病などの生活習慣病の治療からの脱落。
 – 多くの民間医療保険(海外旅行傷害保険など)は糖尿病・高血圧・高コレステロール血症・狭心症などの慢性的な病気に対する補償が180日まで。
 – これにより病院に行かなくなり、気が付かないうちに病状が悪化し、突然致死的な疾患(脳梗塞や心筋梗塞など)が発症する。
 – Work Permit(労働許可証)の発行にも影響する。

引用・参考文献
・海外渡航中はガンでも治療費補償、180日ルールのメリット・デメリットとは

・生活習慣病(高血圧・糖尿病など)になると致死的疾患(心筋梗塞・脳卒中など)のリスク上昇

引用・参考文献:MGP株式会社 生活習慣病とは?

3)海外でのメンタルヘルスケア

・海外でみられるストレスの原因は複合的に出現することがある。

• 異文化にさらされることだけでなく、業務内容も日本にいるときとは大きく変わる。
• 現地と本社との板ばさみ。
• 業務外のアテンド(出張者の相手など)。
• 職場内にいる日本人は少人数のことが多いので、人間関係がこじれると修復困難なことがある。
• 子どもの教育・進学問題。
• 配偶者のキャリアの分断。
• 家族が現地に適応できない。

引用・参考文献
海外赴任者のメンタルヘルス対策 ―異国での勤務をチャレンジングで成長する機会にするために;Business Labor Trend 2017.10 .
海外の日本人とメンタルヘルス 外務省 吉田常孝医務官

・海外で、メンタルヘルスの問題が疑われた・生じた場合

• 疑うべき症状としては意欲の低下、不安・イライラ感、集中力の低下、自分を責めやすい、抑うつ的な気分などが続くとき。
• メンタルヘルスの問題の対応には母国語対応が望ましい。
• ベトナムにおける精神医療は充実していない上に日本語対応も不備なため宛にはならないがいざというときはためらわず受診する・させる。
• 精神的な不調を来した場合は、まずは帰国させ本邦で治療を開始することが最善。
 – ただし本人から自己申告しない例も多くみられ、周囲の人間が気づかないとそのまま現地で治療が継続されることになる。
 – 医療機関から職場に報告する義務はない。むしろ守秘義務違反となる。
• 精神の症状は身体にも現れる。
 – 精神の不調を自覚せずに、様々な身体症状だけ訴えることもあるので慢性的な不調がある場合にも疑う必要がある。

引用・参考文献
・ 海外赴任者のメンタルヘルス対策 ―異国での勤務をチャレンジングで成長する機会にするために;Business Labor Trend 2017.10 .
・ 海外の日本人とメンタルヘルス 外務省 吉田常孝医務官

【2】ベトナムで暮らすリスク

1)ベトナムと日本の比較 2013年WHO statistical profile より

• 5歳未満児死亡率で比較すると

・日本と比べて、外傷・感染性疾患・母体および周産期の状態・ならびに栄養不良を原因とする死亡が多い

2016年 ベトナムでの死因 2016年 日本での死因
1.脳血管疾患 1.アルツハイマー病
2.虚血性心疾患 2.虚血性心疾患
3.アルツハイマー病 3.脳血管疾患
4.肺癌 4.下気道感染症
5.COPD(慢性閉塞性肺疾患) 5.肺癌
6.糖尿病 6.胃がん
7.交通事故 7.大腸がん
8.慢性腎臓病 8.慢性腎臓病
9.下気道感染症 9.肝臓がん
10.結核  10.COPD(慢性閉塞性肺疾患)

引用・参考文献:
•WHO Noncommunicable Diseases (NCD) Country Profiles , Vietnam
•IMHE Country Profile

2)交通におけるリスク

■日本の2倍以上の死亡事故が生じている。
• 2017年のベトナムでの交通事故による死亡者数は8000人以上(正確な統計見当たらず)。
• これに対して日本では2017年に3694人が交通事故により死亡。

■対策
• ベトナムの交通ルールを守り、信頼のできる交通機関を利用する。
⇒ 車ではシートベルトを締める。
⇒歩行者が道を渡るときは、車やバイクをよく見ながら一定の速度で歩く。
いつでも病院に行けるようにパスポートの原本、もしくは携帯電話にパスポートのPDF、そして保険にかかわる書類(カード)を携帯しておく。

引用・参考文献
・WHO Violence Injury Prevntion / Road Safety Status in 2015 in Vietnam.
・警察庁平成29年中の交通事故死者数について
・ベトナムのNews Paper Saigoneer: Saigoneer より
・Health Information for Travelers to Vietnam Traveler View

3)気候と環境によるリスク

高温多湿脱水・熱中症のリスク
上下水道の不備:感染症のリスク
食事のリスク食中毒・寄生虫感染のリスク
雨期に蚊が増加
 ・ 全土でデング熱・日本脳炎のリスクあり。
 ・ 中部高原や東南部などの農山村地帯でマラリアのリスク。
街中の鶏や犬の放飼い狂犬病・鳥インフルエンザのリスク
メコン川流域:その他の河川:寄生虫感染のリスク
大気汚染によるリスク
 ・ 短期間の暴露であっても鼻炎、喘息をはじめとしたアレルギー症状並びに循環器・呼吸器の基礎疾患があると悪化しやすい。
 ・ また汚染レベルが高い時には特に小児・高齢者は気道の感染症にかかりやすくなる。

引用・参考文献
・厚生労働省 FORTH ベトナム・カンボジア情報
・CDC Yellow book より

・大気汚染

ハノイの方がホーチミンよりも悪い傾向にあり、特に乾季がひどくなる。

• 短期間の暴露であっても鼻炎、喘息をはじめとしたアレルギー症状並びに循環器・呼吸器の基礎疾患があると悪化しやすい。

• また汚染レベルが高い時には特に小児・高齢者は気道の感染症にかかりやすくなる。

リアルタイム気質指数ビジュアルマップなどから大気汚染の情報を知ることができる。

 

大気汚染への対策

• N95マスクがあるが、完ぺきではない。                        
 – CDC Yellow book Chinaの頁参照。

• 下記はリアルタイム気質指数ビジュアルマップの見方
 – 空気の汚染具合と身体状況に応じて野外活動について考慮する。

・大気汚染に関する引用・参考文献

• 世界の大気汚染:リアルタイム気質指数ビジュアルマップ
• Air Now
• CDC Yellow book より
Lung Cancer, Cardiopulmonary Mortality, and Long-term Exposure to Fine Particulate Air Pollution
C. Arden Pope III, PhD; Richard T. Burnett, PhD; Michael J. Thun, MD; et al Eugenia E. Calle, PhD; Daniel Krewski, PhD;
Kazuhiko Ito, PhD; George D. Thurston, ScD JAMA. 2002;287(9):1132-1141.doi:10.1001/jama.287.9.1132
ヘイズによる大気汚染の健康影響とその対策 兵庫医科大学公衆衛生学 島 正之 先生
中国におけるPM2.5に関する説明・相談会 ~PM2.5による健康影響~ 京都大学大学院 医学研究科 金谷 久美子 先生

 

・感染症

一般的に言われているリスク
汚染された食事・水からアメーバ赤痢、A型肝炎、コレラに感染があるので安全な食事を選ぶ。
蚊などの虫を媒介した感染症(デング・ジカ・マラリア)があるので蚊に刺されないようにする。
• 飼いですら狂犬病ワクチンを打たれていないことが多いので、狂犬病患者が毎年発生する。
• またインフルエンザも多く発生するため市内でも鶏等に近づかない。
河川には寄生虫がいるので、入らない。

 

引用・参考文献:
・海外旅行者・帰国者のための感染症予防ガイド
・厚生労働省 FORTHによるベトナムのデータ

・なぜ感染症が流行し易い?

高温多湿な夏の気候は伝染性の病気が流行するのに非常に好都合な環境である。
出入りする旅行者・出張者が増えたり、下水設備の悪さも影響する。
• 急速に発展しているが不衛生な場所もまだ多い。

・感染症に対する基本的な対策

1. 手洗いが基本。
2. 生水、氷、カットしてあるフルーツ、生野菜にご用心。
3. 食べ物は十分に加熱(加熱後であっても冷めたものは危険)。
 - 食中毒のリスク
4. 水遊びにご用心、特にはだしは禁物。
 - 破傷風・寄生虫等のリスク
5. 虫(蚊、ハエ、ダニ、ノミ)を介した感染症に注意。
 - デング、日本脳炎などのリスク
6. 動物・鳥を媒介した感染症に注意。
 - MERS、インフルエンザ、狂犬病など
7. 人を介した感染症に注意。
 - HIV、B型肝炎、梅毒などの性行為感染症のリスク
8. 感染の流行状況に気を配る:Health Map

引用・参考文献
・海外旅行者・帰国者のための感染症予防ガイド

・飲食に伴う感染症(下痢・嘔吐など)

• 高温多湿の気候のため病原微生物が増殖しやすい環境に加え、衛生管理が悪い。
ベトナムでは特に予防接種としてA型肝炎ワクチン・腸チフスワクチンの接種が必要である。
• 避けるべき飲料・食事。
 ⇒特に路上・ビュッフェ形式・外国人が少ない店はリスクが高い。
 ⇒ 水道水・氷入り飲料
 ⇒ 生もしくは十分な加熱をされていない肉、シーフード、生の野菜、自分で皮をむいていない果物
 ⇒ 豚の生血入り料理(髄膜炎や敗血症のリスク)
• 捕捉として海産物アレルギーのある人には多くのベトナム料理がリスク(シーフードソースが多く使われているため)。

■病院受診が特に必要な場合
• ぐったりしている、高熱がある、重度の腹痛、血便、大量の下痢もしくは嘔吐(つまり脱水のリスク)のいずれかがある場合。
• 小児や高齢者、および基礎疾患を持っている人。

・寄生虫による感染症

• 便のしみ込んだ土壌に住む、蠕虫(回虫・鞭虫・鉤虫)による感染症がベトナムには多い。2010年のWHOの調査によると人口の75%に蠕虫が感染していた。

• 感染経路と予防
  – 寄生虫の虫卵を含む土で汚染された食事(生野菜など)を摂取したり汚染された土に触った手から口に虫卵が入ったり、小児においては遊びの最中に汚染された土を飲み込むことなどがある。
したがって不衛生な所で食事をしない、食事をする前によく手を洗う、十分に加熱されたものを食べる、加熱せずに食べるもの(生野菜など)についてはよく洗うなどが予防法となる。

  – また寄生虫の種類によっては皮膚から侵入してくるものもあるため裸足で歩き回らない、水溜りなどに踏み込まないことも予防となる。

• 症状は寄生虫の種類によって異なるが、症状がないことからしつこい咳、喘鳴、慢性的な腹部症状、体重減少、貧血などさまざまである。

引用・参考文献:
• IMAT Country Health Advice Vietnam
• 厚生労働省 FORTH 蠕虫症について
• Don’t let worms wriggle in; Viet Nam News September 26 2016

・駆虫薬について

• 寄生虫の感染率の低い日本では便検査や血液検査を行って虫卵などが検出された時などに駆虫薬を服用するが、ベトムは感染率が高率のため、幼児教育施設では政府の方針で半年に一度義務的に配布・投与している。それ以上の
年齢に関しても推奨されている。
• ベトナムではMebendazoleもしくはAlbendazoleが利用可能である。

引用・参考文献:
• IMAT Country Health Advice Vietnam
• 厚生労働省 FORTH 蠕虫症について
• Don’t let worms wriggle in; Viet Nam News September 26 2016

・カタツムリを介した広東住血線虫の感染

• アフリカマイマイを食べたり、触っただけでも感染することがあると報告されている。
• サイズが大きく日本ではあまり見ないため子供が興味を持ちやすい。
• 約2週間ほどの潜伏期の後、幼虫が消化管から血液やリンパ液を介して脳・髄膜・眼球などに移行し,発熱,頭痛および髄膜炎症状、脳神経症状などが生じる。

引用・参考文献:
・Angiostrongylus cantonensis Is an Important Cause of Eosinophilic Meningitis in Southern Vietnam; Angela M. et al. Clin Infect Dis. 2017 Jun 15; 64(12): 1784–1787.
・ NIID 広東住血線虫症
・ Snails carry brain-eating roundworm, doctors warn; THANHNIEN NEWS July 15, 2014

 

・インフルエンザ

• 赤道に近い国々(シンガポール、ベトナムなど)では年に2回インフルエンザの流行がある。

ベトナムの新型インフルエンザのリスク

• 2009年から2010年に世界的に流行した豚インフルエンザ(A型H1N1亜型:ヒト感染あるが通常のインフルエンザ並みのリスク)や鳥インフルエンザ(H5N1亜型:致死率60%、 H7N9亜型ウイルス:20~30%)。
• ベトナムでは1年を通じて各地で家禽類のH5N1型⿃インフルエンザの流⾏がみられる。これによりヒト感染例も散発的に報告がある。
• A/H5N1インフルエンザ・A/H7N9インフルエンザ等の流⾏の際に隔離・⼊院治療先は、国⽴の指定病院に限られる。また感染すると治癒して他人に感染するリスクがなくなるまで日本に帰れない。

 

・インフルエンザへの対策

• 生後6ヵ月以上の者はインフルエンザワクチンを受ける(最重要)。
 特に5歳以下の子供、65歳以上の高齢者、妊婦、喘息・呼吸器疾患・心疾患のある方。
• 具合の悪そうな人に近づかない。
生きた鳥や飼われたり売られているところに近づかない。
 川や海辺で死んだ野鳥や家禽に近づかない。
 生や完全に加熱されていない(黄身が流れるようではダメ)卵や鶏肉をたべない。
• インフルエンザに罹った場合、人に近づかない(病院に行くのは別)。
• 公共の交通機関(飛行機など)を利用しない(航空会社ごとに規定がある)。

引用・参考文献:・CDC Influenza

・蚊媒介感染症

• 蚊媒介感染症とは、感染蚊に刺されることにより感染する感染症の総称。
• ベトナムを含む熱帯・亜熱帯地域で広く流行している。
• ベトナムに存在するのはジカウイルス感染症、チクングニア熱、デング熱、日本脳炎、マラリアなどであり、赤字は特に問題になることがあり注意が必要。
• 共通する予防用として長袖、長ズボンを着用し肌の露出を少なくする、適切な防虫剤を使用するなど。

引用・参考文献:
• 厚生労働省 蚊媒介感染症の診療ガイドライン
• 厚生労働省 FORTH 蚊媒介感染症について
• CDC Yellow book

 

・デング熱(Dengue fever)

• デングウイルスをもつ蚊(ネッタイシマカとヒトスジシマカ)に刺された3-14日後に高熱で発症。→帰国してから発症する上、日本の一般病院では診断が難しい(検査キットがない)。 
• ベトナムでは1年を通じて発生し、特に夏の雨期にピーク。
再感染時にはデング出血熱を発症しやすいといわれている。

 

・ジカ熱(Zika Fever)

• ジカウイルスをもつ蚊(ネッタイシマカとヒトスジシマカ)に刺されたおよそ2-7日後に高熱で発症。
• デングウイルスとよく似た症状だが重症化することは少ない。
• 軽度の発熱、発疹、結膜炎、関節痛、筋肉痛、倦怠感、頭痛などが主な症状
気を付けるべき事項として
 - 時にギランバレー症候群(両手両足に力が入らなくなる)を起こすことがある。
 - 妊婦に感染すると胎児に小頭症などの先天奇形を生じることがある。

引用・参考文献
・厚生労働省 ジカウイルス感染症に関するQ&Aについて
・CDC Zika and Pregnancy
・CDC Zika Virus

 

・デング・ジカウィルス対策

蚊が発生しないようにする(ボウフラの駆除)。
• 明るい色の長袖・長ズボンを着用。
• DEET、IR 3535、Icaridin の入った虫よけを使う。にIcaridinは年齢制限がなく使いやすく日本でも販売
されている。
• 網戸や蚊帳を利用する。
• デング熱ワクチンに関してはベトナム保健省は未導入
• おかしい(高熱・寒気・頭痛・嘔吐・下痢・腹痛・血便・目が黄いなど)と思ったら病院に行く。

引用・参考文献:

・WHO Viet Nam Update #3 on Dengue 28 August 2017

 

 

・ジカ対策

• 特効薬・ワクチンはないので感染しないことが最重要。
• 妊婦はベトナムへの旅行を控える。
基本はデング対策と同じ
性行為における注意ジカ熱の症状が現れなくとも、感染は否定できない!
女性側
・ 流行地域に滞在中はコンドームを使用するなど、安全な性行為を心がける。
・ 流行地域から帰国した女性は帰国後6ヵ月間は妊娠を控える(今後さらなる研究により短縮される可能性あり)。
男性側
・ 6ヵ月間は精液中にウィルスが排出されている可能性があるので、妊婦との性行為、妊娠目的の性行為は控え、必ずコンドームを着用する。

引用・参考文献
・厚生労働省 ジカウイルス感染症に関するQ&Aについて
・CDC Zika and Pregnancy
・CDC Zika Virus

 

・デング・ジカウィルスに関する引用・参考文献

デング
• 厚生労働省 FORTH デング熱について
• CDC Dengue in Vietnam

ジカ
• 流行地情報:CDC Travelers’ Health

共通
• 虫よけについて: WHO Viet Nam Update #3 on Dengue 28 August 2017
重篤なショック,多臓器不全を呈し救命し得なかった重症型デングの1例(A fatal case of severe dengue infection complicated by refractory shock and multiple organ failure) 遠藤 真佑 他: 日本では診断されづらいという例
→帰国後体調が悪い時には日本渡航医学会 帰国後診療医療機関リストより近くの病院を検索。

 

・日本脳炎

• 1ケ月以上長期滞在する方、もしくは短期であっても農村部や郊外で日本脳炎ウィルスを持つ蚊にさらされる可能性がある方には日本脳炎ワクチンの接種を推奨。
• 日本脳炎ウイルスに感染したブタやイノシシなどの血を吸った蚊を介してヒトが感染する。
• 5月から10月にかけて季節性に発生し、特にハノイの北部地域周辺や北部の中国と国境を接する地域にも存在する。
• 多くの場合(99%以上と言われている)は無症状だが、発病した場合(高熱、痙攣、意識障害など)は30%程度が死に至る。また死を免れたとしても半数以上は脳に障害を残し重篤な後遺症が残る。
• ウィルス性の疾患であるため発症したら対症療法しかなく、抗生物質などは効果がない。

 

引用・参考文献
・CDC, Yellow Book, Japanese Encephalitis
・CDC, Travelers’ Health, Vietnam
・NIID 国立感染症研究所 日本脳炎とは

 

・日本脳炎対策

• ウィルス性の疾患であるため発症したら対症療法しかなく、抗生物質などは効果がないため蚊に刺されないことが重要。
• 一ケ月以上長期滞在する方、もしくは短期であっても農村部や郊外で日本脳炎ウィルスを持つ蚊にさらされる可能性がある方には日本脳炎ワクチンの接種を推奨。

 

引用・参考文献
・海外渡航者の予防接種Q&A

 

・マラリア対策

• ハマダラカは主に夕暮れから明け方に活動する。蚊に対する対策は基本はデング対策と同じ。
• 予防薬があるが薬剤耐性のことがあったり地域によって処方内容が変わることがあるあるので、常に最新の情報
https://www.cdc.gov/malaria/travelers/country_table/v.html)に留意した処方を渡航外来専門医に行ってもらう。

 

引用・参考文献
・厚生労働省 FORTH マラリアについて
・CDC Malaria
・fitfortravel Vietnam Malaria Map

 

・狂犬病

• ベトナムの飼い犬は必ずしも狂犬病ワクチンを打っていない(狂犬病予防注射の接種率は60%以下)。
• 犬以外の哺乳類(猫・コウモリ)も感染していることがあり、唾液を介して感染する。
• 猿も保有しているので猿がいる観光地(ソントラ半島、カットバ島)に行く際は注意。
• 狂犬病は罹患は稀だが、発症した場合は死亡率がほぼ100%なので優先度が比較的高い。
• 特にアウトドアや洞窟探検に参加する旅行者はリスクが高い。
小児は噛みつかれやすい。

 

引用・参考文献
・ Health Information for Travelers to Vietnam Traveler View
・ CDC, Rabies
・外務省からの情報
・WHO, Fact sheets, Rabies

 

・狂犬病の予防対策

• ベトナムは輸入の狂犬病グロブリン・ワクチンに頼っているため十分な量が供給さ
れずに、病院に受診しても在庫がないことが頻繁にある。

• 事前対応としては予防接種が重要。
 – WHO/CDCからの情報(2018年5月時点)ではDay0, 7,(21 or 28)となっている。暴露前予防接種は個人ごとに状況が変わるので日本国内にいる間にトラベルクリニックに相談しておく。
 – ただしベトナム厚生省の方針としては暴露前予防2回接種の方針になっていないため、日本で2回しか接種していない場合に認められない危険性がある。

• 予防対策を行うメリット
 ・ 噛まれたときにすぐに病院(国外)に行けないという状況の際でも既に持っている免疫での防護が期待できる。
 ・ ワクチン投与済みならば、グロブリン(血液製剤であり、投与に伴いHIV・その他の感染リスがある)の投与が必要なくなる。

• デメリット
手間と金銭(自費診療)。

 

引用・参考文献
・Rabies vaccines: WHO position paper – April 2018
・CDC, Travelers’ Health, Rabies

 

・ワクチン未接種で噛まれると WHO狂犬病情報より

分類 接触状況 暴露後予防法
Category 1 • 動物(犬・猫・その他哺乳類)を撫でた、餌を与えた。

• 傷や病変のない皮膚を舐められた。

• 接触歴が確かなら、治療は不要。
(しかしながら精神的に成熟していないもの、精神に問題がある者の接触歴はあてにならないとされている)
Category 2 • 素肌を軽く噛まれた。

• 出血のない小さなひっかき傷や擦り傷がある。

• 直ちに狂犬病ワクチンを接種開始。
(動物がイヌやネコの場合は10日以上観察の上動物が健康であれば、もしくはその動物を殺処分しウィルスがネガティブであれば治療中止が可能)• 創部の治療
Category 3 • 一か所以上の皮膚を貫通する咬傷、ひっかき傷がある。

• 傷ついた皮膚を舐められた、唾液で粘膜を汚染された。

• コウモリと接触した。

• 直ちに抗狂犬病免疫グロブリンと狂犬病ワクチンを投与。
(動物がイヌやネコの場合は10日以上観察の上動物が健康であれば、もしくはその動物を殺処分しウィルスがネガティブであれば治療中止が可能)• 創部の治療

咬みついた動物(犬・猫)が10日間の経過観察において健康であれば治療を中止することができる。
上記に追加事項として以下のことがある場合にはリスクがさらに上昇する。
 ⇒ 原因となった動物が狂犬病を媒介する動物であった場合。
 ⇒ 狂犬病がまだ流行している地域で接触した。
 ⇒ 動物が病気っぽかったり異様な行動をしていた。
 ⇒ 創部や粘膜部が動物の唾液と接触した。
 ⇒ 何もしていないのに咬みつかれた。
 ⇒ ワクチンを受けていない動物に咬みつかれた。
輸入に頼っているためベトナム国内にワクチン・グロブリンがないことがある。

 

・動物(犬・猫・その他哺乳類)と接触してしまったら

• 噛まれたらすぐに水と石鹸で傷口をよく洗う
• その後間を置かず病院受診。たとえすぐに行けなくても必ず病院に行く。
• 選べるならば信頼のあるインターナショナル病院。
 ローカル病院において規定通りの暴露後接種がされていないことが散見される。
• ただしベトナムにはグロブリンがないことが多く、日本でも入手困難なのでタイかシンガポールに行ってもらうことが多い。

 

引用・参考文献
Rabies vaccines: WHO position paper – April 2018
・CDC, Travelers’ Health, Rabies

 

・病院に受診し暴露後予防接種

暴露前接種をしていない場合
Day 0 傷口を石鹸と水で洗浄後、ワクチンのうてる国際病院に直ちに行く。
遅くとも5日以内。
病院では傷口の治療、抗生物質投与、狂犬病ワクチン1回目、抗狂犬病ガンマグロブリンを接種する。
Day 3 狂犬病ワクチン2回目を接種する。
Day 7 狂犬病ワクチン3回目を接種する。
Day 14 狂犬病ワクチン4回目を接種する。
(Day 28) 以前はここで5回目があった。

 

暴露前接種をしている場合 
Day 0 傷口を石鹸と水で洗浄後、ワクチンのうてる国際病院に直ちに行く。遅くとも5日以内。
病院では傷口の治療、抗生物質投与、狂犬病ワクチン1回目
Day 3 狂犬病ワクチン2回目を接種する。
引用・参考文献
・CDC, Rabies Vaccination Information Statements

・Rabies vaccines: WHO position paper – April 2018

 

・猿咬傷

観光地であるソントラ半島、カットバ島において多数の猿(マカク属)が存在しており観光客が咬まれたり引掻かれたりするケースが見受けられる。
• CDCの勧告によると狂犬病・破傷風・Bウィルスが感染する可能性がある。
 ⇒サルからの咬傷、引っ掻き、サル生材料取扱中の針刺し事故などがあった場合には暴露後発症予防処置を考慮すべきである(詳細は引用参照)。
• 暴露後発症予防処置は狂犬病対策に加えて、Bウィルスに対して抗ウィルス療法が必要になる(詳細は引用参照) 。

引用・参考文献
・CDC B Virus
・Bウィルス感染症とその対策 モダンメディア 55巻11号 277 – 282
・Travelers Guide to Animal Bites, COAST VIETNAM

 

・破傷風

• 土壌や、動物の排せつ物に触れる機会が多い地域で感染しやすい。
• 感染経路としては、動物咬症やそれ以外の怪我(擦過傷、火傷含む)を負った際の傷口から。
• ベトナムでは軽微な怪我でも日本に比べリスクが高い
• 犬以外の哺乳類(猫・コウモリ)も感染していることがあり、唾液を介して感染する。
• 潜伏期間は3-21日であり(多くは10日)、筋硬直・こわばり・痙攣が顎や頸部を中心に様々な部位(怪我を負った部分も含む)に生じる。治療が遅れると死亡することもある。
• 予防接種があり、10年に一度のワクチン接種で免疫の維持が可能。
– 日本人が小児期に受けたワクチンの効力は22歳以下まで。それ以上は追加接種をしている必要がある。

 

引用・参考文献
・CDC, Yellow Book, Tetanus
・厚生労働省 FORTH 破傷風
・CDC, Pink Book, Tetanus

 

・破傷風予防対策

• 病院に受診しても在庫がないことが頻繁にある。

• 予防対策を行うメリット
⇒怪我を負ったときにすぐに病院(国外)に行けないという状況の際でも既に持っている
免疫での防護が期待できる。

• デメリット
⇒手間と金銭(自費診療)。

引用・参考文献
・CDC, Yellow Book, Tetanus
・厚生労働省 FORTH 破傷風
・CDC, Pink Book, Tetanus

 

・暴露後予防接種

過去の破傷風   キソイド投数 清潔で小さな創傷 それ以外の創傷
破傷風ワクチン 免疫グロブリン 破傷風ワクチン 免疫グロブリン
<3もしくは不明
≧3 最後の投与が10年以上前の場合 最後の投与が5年以上前の場合

引用・参考文献
・CDC, Yellow Book, Tetanus
・厚生労働省 FORTH 破傷風
・CDC, Pink Book, Tetanus

 

・体液による(性行為・Tattooなど)感染症

ベトナムには隠れた性風俗産業が存在する。 
 – 性病のコントロールはされていない。
• タトゥーを提供する店も多く存在する。
• 麻薬のまわし打ちも存在するため、
 エイズ・肝炎も非常に多い。
• ベトナムにおけるB型・C型肝炎ウィルスの
 感染者数は、合わせて2000万人(4 – 5人に1人)に上る。
• 性交渉がありうるなら事前の教育ならびに
 B型肝炎ワクチン接種が必要。
• 性交渉後、不安・症状があるなら病院受診。
 
引用・参考文献
・日本性感染症学会
・Viet Jo ニュース;B型・C型肝炎ウイルスの感染者数、2000万人超

 

・性感染症予防対策10ヶ条

1.セックスの相手を限定する
2.コンドームは必ず付ける現在では、性感染症を予防できる唯一の手段がコンドーム。オーラルセックスでも性感染症はうつるので最初から着けておくことが大切。
3.性行為=インサート(ペニスの挿入)ではない「性行為で感染する病気」と聞いて、直接インサートをしなければうつらないと思うのは間違い。口や指からも感染する。
4.体調不良時のセックスは厳禁。
5.セックス前はシャワーで清潔に。
6.屋外でのセックスはしない。
7.寝具はつねにキレイにしておく。
8.性器が傷つくようなことはしない。
9.排尿・排便をすませてからする。
10.月経中のセックスはしない。

 

・特にベトナムに長期滞在する方が気を付けるべき最近話題になっている感染症

• ベトナムで働いていることによって感染する確率が上がる病気。

• 日本に持ち込んではならない病気。

• ベトナムで長期に生活していく人が気を付けるべき病気。

 

 

 

・麻疹(はしか)・風疹・流行性耳下腺炎(おたふく)

生まれてから2回予防接種していない人はかかりやすい

麻疹(はしか)
 – 咳嗽、鼻汁、結膜炎や、全身に広がる発疹を認める疾患。空気感染であり感染力が強い。
 – 特効薬はなく対症療法のみであり、発症すれば麻痺などの神経学的後遺症が残ったり死亡することがある。 2回の予防接種で免疫を付けておくことが重要。
 – 2018年に話題になっているように海外で感染して日本国内で発症することがアウトブレイクのきっかけになることが多い。ホーチミンでは2014年にアウトブレイクしている。

風疹
 – 飛沫感染をする。主な症状として発疹、発熱、関節炎、リンパ節の腫れがある。まれに脳炎を起こすこともある。
 – 特に妊娠初期の妊婦に感染すると、様々な障害を持った子供が生まれる可能性が高まる。
 – 特効薬はなく対症療法のみである。妊娠前の女性だけでなく、成人男性、妊娠中の女性の家2回の予防接種で免疫を付けておくことが重要。

流行性耳下腺 
 – 突然の両側または片側の有痛性耳下腺腫脹や微熱、倦怠感、頭痛、筋肉痛、食欲低下、時に後遺症として難聴。
 – 飛沫・接触感染である。特効薬はなく対症療法のみである。

引用・参考文献
・東京都感染症情報センター 麻しん

・NIID 国立感染症研究所 風疹

・東京都感染症情報センター 流行性耳下腺炎

・厚生労働省 風しんについて

 

 

・2013年、日本で風疹大流行 免疫が不十分な年齢で流行が認められる

引用・参考文献
・風疹の感染予防の普及・啓発事業

 

出産のご予定がある方だけでなく、全ての赤ちゃんを守るために予防接種した人を増やす

妊婦が風疹ウイルスに感染すると、赤ちゃんが
「先天性風しん症候群」(先天性心疾患、難聴などの先天異常)を発症する恐れがある。

厚生労働省の方策として

妊娠前の女性だけでなく、
成人男性、
妊娠中の女性の家族

も予防接種を受けることが勧められて
いる

 

 

 

 

 

 

・結核について

• 2016年のWHOの統計によると、ベトナムにおける結核の感染率は日本の約9倍
(ベトナム133.0人/人口10万人vs 日本16人/人口10万人)。

• 感染しただけでは症状が出ない(潜伏感染)が何らかの原因で免疫力が低下したり体力が落ちたときに発症して感染源になることがある。

• また排菌(咳などで体外に菌を出すこと)をしていなければ周囲に感染させる心配はない。

発病すると以下の症状が出現
  初期症状:せき、痰、寝汗、疲れやすい、37~38度の発熱
  悪化症状:血痰、胸痛、体重減少、呼吸困難など。

引用・参考文献
・WHO Vietnam Tuberculosis profile.
・東京感染症情報センター 結核
・企業で役立つ結核の正しい知識 外国人実習生を受け入れる企業向けパンフレット

 

・結核の予防対策

• 予防接種歴を確認する。受けてなければ医師に相談。
 参照:ベトナムで施行されている予防接種率について。

• 咳をしている人に近づかない。

• 初期症状は風邪とよく似ているため、2週間以上連続して咳が出ている場合には病院で検査を受ける(受けさせる)。

• 検診を定期的に受ける。

• 使用人(ナニー・ドライバー)を雇う場合は,必ず胸部レントゲン写真を含む検診を行って,感染性のある結核でないことを確認する必要がある。
⇒当院(Raffles Medical)に検診サービスがあります。

引用・参考文献
・ 企業で役立つ結核の正しい知識 外国人実習生を受け入れる企業向けパンフレット

 

4)その他のトラブルーベトナムにいる日本人医師として遭遇したさまざまなトラブル

アタマジラミ、やけど虫など日本であまり経験しない疾患。

 

• バイクを利用したひったくりにより引き倒されて外傷を受けることが比較的頻繁にある。

 

• 麻薬・覚せい剤・笑気ガス絡みのトラブルが時々ある。
その他参考情報
・ Health Information for Travelers to Vietnam Traveler View
・ 外務省からの情報

・シラミ症

• ベトナムでは未だにアタマジラミがよくみられる。

• 家族内に発生した場合、家族全員が治療対象。

• シラミを除去するためのシャンプーが現地にもあり、病院で処方可能(使い方が特殊なため説明をしっかり理解する必要あり)。

• また幼稚園などの集団生活で感染するため発生したら担任に報告する必要がある。

 

引用・参考文献
・ シラミをうつされた!? ~ベトナムでできる対処法~ VIET JO 2016年04月22日
・ NIID シラミ症とは

 

・やけど虫(ハネカクシ)

• ベトナム北部・南部問わずハネカクシによる皮膚障害(やけどをしたように赤く腫れ、水疱が生じる)が散見される。

• ハネカクシの体液が皮膚障害の原因なので体についているのを見つけた場合はつぶさず払い落とす。

• 皮膚障害がこじれると細菌感染が合併することもあるので医療機関を受診する。

 

引用・参考文献
・ 「やけど虫」に注意、叩かずそっと払いのけて;VIET JO 2015/10/14
・ 日本臨床皮膚科医会 線状皮膚炎

 

【3】ベトナムの医療機関と病院受診の仕方について

ベトナムの医療の情報

• ハノイやホーチミンなどの都市では外国人・日本人患者を診る(と謳っている)病院は幾つかあるが、そのクォリティは一定していない。
商業目的なだけのこともある。

• また輸血用血液製剤の安全性、入院施設、専門医のも低い。

• 高度な医療が必要になった際に、バンコクやシンガポールといった医療先進地域で治療が受けられるように十分な補償が付いた海外旅行者保険に入っておく(なお本への帰国費用等は距離が遠く高額になるため、仮に保証額の範囲内であったとしても保険会社が許可しないことがある)。

• またローカルの薬局や病院で一般的に使用されている薬の質が悪いため、高額であっても信頼のあるInternational Clinicを受診することが推奨される。

引用・参考文献
・CDC Yellow book

 

・ベトナムで陥りやすい問題

現地事情を理解できる専門家(医師・アシスタンス会社)とのコミュニケーション不足。

• 初めて海外に出てくるような新規の日系病院、顧問医が必ずしも現場の医療を認識していない
 ⇒外国(日本・シンガポール・タイなど)の紹介病院との関係不足
 ⇒医療レベルが高い病院ではなく、自分たちの利益になる病院を選択する傾向がある。

• 現地の病院では治療情報の混乱や、開示拒否が多いので、その後の対応に混乱が生じやすい。

商業主義(長期入院・過剰診療・外国人価格)を第一とする現地医療機関多いので 前金をすぐに準備できなければ緊急処置や手術が受けられない。

 

・ベトナムに持ってくるもの

• 海外旅行者保険・クレジットカード付帯保険の内容の確認および証券を常に携帯する(写真等のデジタルデータ可)。

• 特に既往歴のある方、高齢者に関しては
⇒英文で身体状況を説明する書類。
⇒ワクチンの接種状況を英語で記した書類。
⇒普段から使用している薬品(商品名でなく原材料の英語名)に関する医師の署名の入った処方箋。

• 旅行に必要な薬(常用薬、トラブル対策の頓服、抗マラリア薬(地域に応じるので医師に要相談)など)


引用・参考文献
・CDC, Health Information for Travelers to Vietnam, Healthy Travel Packing List
・海外旅行者・帰国者のための感染症予防ガイド
・厚生労働省 FORTH もしもの時に備えて -旅行用セット
・CDC Malaria Information and Prophylaxis by countries.

 

・渡航前のワクチンの打ち方の一例

• 情報を発信する団体・所属する会社・病院などによって違うことがある。

• 基本的にはCDCやWHOの情報を参考にする。

• 国ごとに必要なワクチンが異なる。

• 年齢・病状によっても異なる。

出典:
・日本プライマリ・ケア連合学会 渡航ワクチンとは
・CDC Health Information for Travelers to Vietnam Traveler View

 

 

・ベトナムにある国際的な病院でのワクチン情報

基本的には国際基準とベトナムの法令に従う:Raffles Medical HCMCの例

・日本で始めたワクチンの続きが海外でできるので来越前か直後に一度病院でご相談を。

ベトナムの狂犬病ワクチンはVerorab・Rabipurを主に使用
している。使用法は添付文章とベトナム保健省の方針に従う。

引用・参考文献:
・海外渡航者の予防接種Q&A
・CDC Health Information for Travelers to Vietnam Traveler View
・Raffles Medical ベトナム ワクチン情報

 

・医療費用をどう支払うか?

• 海外旅行傷害保険

• クレジットカード付帯海外旅行保険(ただし受診前に保険会社に事前連絡が必須

• 国民健康保険、社会保険

• 会社払い(出張者、現地で働いている方)

• ベトナム当地の傷害保険

• 自費払いなど

 

・日本の健康保険はカバーしているが海外旅行者保険ではカバーしないものがある

• 車の保険と一緒で、契約時に自分で補償内容を選んでいるはずなので、自分自身で把握しておく(病院にきいてもわかりません!)。
• ほぼすべての場合、海外で発症した急性期(6ケ月以内)の病気やケガを対象としている。
• また持病や既往症にも適用されない。
• 歯科治療や出産にかかわる事項(妊婦検診等含む)なども適用されない。
持病(慢性疾患)、妊娠、予防接種、健康診断、歯科治療に関連した診療に対して海外旅行傷害保険等は適応されないことが多い。

 

・海外医療搬送について

• バンコクから日本まで、コマーシャルフライトで250万円、チャーター機で900万円程度。
このため、外傷・疾病費用については2000万円、救援者費用についても 000万円加入するように指導している会社も有る。
3000~4000万円分加入していればあれば、”容体が許せば”であるが、日本まで搬送してくれる可能性がある。
特に新規に進出してきた会社の方の場合、十分な額の旅行傷害保険に加入していないケースも多く、 会社の保障や家族等に連絡して送金してもらうこともある。

 

・総合診療医(General Practitioner)とは?

• ベトナムで病気になった時に最初にかかる医者

• 英国連邦系で発展しているシステムであり日本では2018年よりカリキュラムスタートする予定なので一般的には馴染みがない。

• ベトナムにいるほとんどの日本人医師は総合診療医として保健省に登録されている。

• 総合診療医は、医療サービスの玄関口としてさまざまな疾患に対応し、必要に応じて専門医・より高度な医療施設に依頼する判断をする。

小児・高齢者を問わず、風邪や生活習慣病などの日常的な健康問題に加えて専門医的疾患のうち軽度から中等度症状まで対応する臨床能力がある。

 

・日本人向けの病院(Raffles Medicalホーチミンクリニックの例)

• 以下の図のように総合診療医は、医療サービスの玄関口として、さまざまな疾患に対応し、状況によって専門医と協働して診療を行う。
• 重篤な疾患なら国内・国外の高度な医療施設に依頼する。

 

・病院のサービスを知るー多くの日本人向け病院の一般的なサービス内容ー

• かかりつけ医としての機能。

• 一般的な健康診断・産婦人科検診・乳幼児健診など。

• ワクチン接種:日本で打ち始めたワクチンの続きもベトナムで可能。

• メンタルヘルスの相談。

• 会社内での健康対策などの相談。

 

・日ごろの備え

• 保険の内容の確認および証券を常に携帯する(写真等のデータ可)。

• 特に既往歴のある方、高齢者に関しては緊急時に備えて以下を携帯する。
 ⇒ 英文で身体状況や常用薬、ワクチン接種状況を説明する書類・データ。

• 自分に合ったかかりつけ医を見つける。
 – 夜間に発症した場合、重症化しやすいので24時間対応の病院が理想的。
 – 風邪などで受診したときに健康診断結果(別の病院で受けたとしても)を伝えておく。
 – 普段からの細かなやり取りがいざという時(意識がないなどの)明暗を分ける。

ワクチン接種などを常にUpdateする(ワクチンのライセンスを持つ
 International Clinicでは日本での続きが可能)。

 

・病院に行くべき症状ー特に風邪に関してー

いつもと違う症状だと思ったら。

39.0度以上の高熱

汗や寒気を伴うような発熱

色のついた痰がでるとき

リンパ節(首のグリグリ)が大きく腫れているとき

頬やオデコの痛み(副鼻腔炎に伴う痛み)が出てきたとき。

✓ 症状が4日以上たっても良くならないとき。
呼吸困難がある、胸が苦しいとき。
✓ 頭痛が強い時、首が硬くなってきたとき。
✓ 発疹がある。
✓ 関節痛・筋肉痛がある。

 

・特に小児の場合

発熱に関して

2歳以上の子供:39度以上の熱が出たとき

2か月以上2歳未満:38.5度以上の熱が出たとき

2か月未満:37.5度以上の熱が出たとき

• 発熱が3日以上続くとき

症状としては

• 機嫌が悪い、水分摂取ができない、嗄れ声、尿が少ない、息をする時にゼーゼー言っている。肋骨と肋骨の間がペコペコ動いている。

保護者の「いつもと違う」と感じたら。

 

・Work Permitのための検診

プロセスが複雑

• 検診が提供できるのはベトナム人医師

• 検診の結果+職能、学歴によってWork Permitが出るか出ないか変わることがある。

 

地域によって異なる検査(特に感染症)の内容(注意:2018年時点)

• ハノイ: HIV、B型肝炎、梅毒、マラリア、結核が検診に含まれる。

• ホーチミン: 結核以外の感染症はルーチンでチェックしていない。

 

来越後の生活習慣病のコントロール不良によりWork Permitが更新されないこともある

ベトナムでの生活は生活習慣を悪化させやすい。

• Work Permit検診に引っかかってもその後の対応で通る可能性があるので、問題があっ
たら医師に受診を(当院でも検診ならびにその後の対応ができます)。

 

・帰国後のフォローアップも大事

渡航後外来という特殊外来がある

• 日本に帰ってから体調の不良を感じた場合、必ず感染症科のある病院を受診し、渡航歴を伝える。
その際には渡航歴に加えて『何処で、何をしたのか?』、『動物との接触があったか?』を必ず伝える。

• 帰国から1年程たってから症状が出ることもあり得る(マラリアなど)。

• デング熱など日本にない疾患は、日本の医師は見たこともないので(すぐには)診断できない。結果死亡例あり。
・重篤なショック,多臓器不全を呈し救命し得なかった重症型デングの1例(A fatal case of severe dengue infection complicated by refractory shock and multiple organ failure) 遠藤 真佑 他: 日本では診断されづらいという例

• 帰国後体調が悪い時には日本渡航医学会 帰国後診療医療機関リストより近くの病院を検索。

引用・参考文献
・CDC, Getting Sick after Travel

 

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